老化、主因は細胞内の活性酸素

 カロリーを制限すると寿命が伸びる。さまざま動物実験から、こんな興味深い結果が得られている。体内のエネルギー代謝の速度が下がることが老化防止に深く関っているようだ。どんな仕組みだろうか。老化研究の第一人者、石井直明・東海大学医学部教授に話を聞いた。

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 人や動物は生命活動をするために、摂取した食べ物をエネルギーに替え、それを消費していく。体内で使うエネルギーは、主に細胞の中の小器官であるミトコンドリアで生成される。炭水化物や脂肪、さらに肺から取り込んだ酸素を利用して、エネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)を生産する。この過程で、酸素の2%ほどが、普通の酸素に比べ不安定で反応性の高い活性酸素に変化する。  

 石井教授によると、この活性酸素が、細胞内の染色体や酵素、細胞膜といった分子に損傷を与える「主犯」となる。傷ついた分子は直ちに修復または分解される。しかし、修復を担う酵素も活性酸素によってダメージを受ける。そのため、年齢とともに修復機能が落ち、細胞自体の機能も低下する。修復不能なほど損傷を受けた細胞は、自ら「アポトーシス」と呼ばれる死を選ぶ。 「生物の老化は、組織や器官の機能が低下することで起きる。そうした機能の低下は、細胞一つ一つの機能が低下し、さらに細胞数が減少することで引き起こされる」と石井教授は説明する。  

 寿命の長さや老化の速度を左右する「老化遺伝子」といわれるものが、線虫や酵母菌から次々に発見されている。age-1遺伝子やdaf-2遺伝子などが知られる。石井教授によると、こうした老化遺伝子もエネルギー代謝に関わっているという。「老化遺伝子に突然変異が起きると、エネルギー代謝の速度や、活性酸素の発生量が変化する。これが老化の速度に影響を与えるのではないか」 。

 活性酸素以外にも老化の原因はある。正常な細胞は分裂できる回数に、そもそも限界があるようだ。老化は、環境や遺伝などさまざまな要因が複雑に絡まり合い、非常に長いプロセスを経て起こる。老化の全貌解明には、まだ時間がかかるかもしれない。石井教授は「一つ一つの過程をしっかり検証していかなくてならない」と指摘している。