コーヒーで眠気スッキリ

 「眠いけれど、明日の朝までに残りの仕事を片付けないと…」。こんなとき、頼りになるのがコーヒーなどカフェインの入った嗜好品だ。なぜ、カフェインを摂取すると眠気が抑えられるのだろうか。カフェインと眠気の関係に迫ってみた。

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カフェイン作用のしくみに迫る

 「コーヒーを飲むことで、人間は、自分自身を少しばかりだましているのですよ」 。 2006年6月、京都での国際生化学・分子生物学会議。カフェインに関する研究成果を発表したスウェーデン・カロリンスカ研究所のバーティル・フレッドホルム博士はこう語った。  

 人間などの生物は、体を休めるためのシグナルとして、プロスタグランジンD2(PGD2)というホルモンを使って、アデノシンという睡眠物質の脳内の濃度を増やす。このアデノシンが「鍵」となって、脳内のアデノシン受容体という「鍵穴」に入ると、脳の睡眠中枢とよばれる場所を刺激する。つまり、眠くなるわけだ。  

 アデノシンとアデノシン受容体の「鍵」と「鍵穴」の関係に邪魔をするのがカフェインだ。大阪バイオサイエンス研究所の裏出良博博士の研究によると、カフェインはアデノシンと化学構造の一部が似ているため、アデノシン受容体の穴に入り込んでしまう。すると、アデノシンが働かなくなるために眠気が起きない。冒頭の「自分自身をだます」とは、つまり「自分はまだ眠くないのだ」と錯覚させることを指している。  

 そもそもなぜ、カフェインは自然界に存在するのだろう。 「植物が、外敵の昆虫から身をまもるための毒だったのでは」というのがフレッドホルム博士の見方だ。植物が自衛のために作った武器を、人間が利用していることになる。  同博士によると、どのような人がカフェインに対して敏感であるかは「まだ解明がされていない」。ただし、神経質な人は少しのカフェイン摂取で胃の調子を悪くしやすいこと、また、男性より女性のほうが、カフェインに敏感なことなどの傾向はわかっている。  

 では、眠いけれど仕事が溜まっている場合、コーヒーを飲んで頑張ったほうがよいのか。それとも眠ってしまったほうがよいのか。「眠りの悪い人は作業効率も悪くなる。仕事がたまっていればいるほど、まず寝ることが大切」とフレッドホルム博士。やはり「眠ること」に軍配が上がるようだ。

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