「黄砂用マスク」にご注意を

 毎年、春になると悩まされる花粉。加えて最近は、日本全土に黄砂(*1)が飛来するようになり、その影響で健康を害する人が増えている。花粉に対しては「花粉用マスク」が世の中に出回っているが、いずれ「黄砂用マスク」なるものも出てくるに違いない。実際、おとなりの韓国では黄砂用グッズがよく売られている。しかし、これには少し注意が必要だ。

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 花粉も黄砂も非常に細かい粒子であり、体内に入ることを防ぐには、マスクで口と鼻をふさぐのが最も手っ取り早くて効果がある。「花粉用マスク」には様々な種類があるが、最も安価なものは1枚数十円で売られている。これは、花粉粒子の直径約30μm(スギ花粉,*2)あるいはそれ以上の大きさの粒子の侵入を防ぐことができる。しかし、このタイプのものは、直径数μm以下の粒子を防ぐことは難しい。 日本に飛来する黄砂の直径は約4μm(*3)。安価な花粉用マスクでは防げないと考えたほうがいい。そこで数μmの粒子の侵入をも防ぐ「黄砂用マスク」が出現する余地がある。  

    しかし、である。花粉対策として高性能のマスクがある。これはじつは、工業用の「防じんマスク」といわれるもので、厚生労働省により性能規格(*4)が定められている。おおざっぱに言うと、直径約0.1μm以上の粒子を防ぐことができるものだ。0.1μm以上というのだから、もちろん黄砂も防げる。このマスクは1枚200円程度と少し高いが、長時間使用でき、また黄砂も花粉も防ぐことができると考えれば、お得である。  

 そう。これほどの高性能マスクでも1枚200円程度である。「黄砂用マスク」などとうたい、1枚500円も1000円もするものが現れたら、それは単なる“ぼったくり”、悪徳商売である。 健康にしろ、悪徳商売にしろ、自分を守れるのは自分しかいない。十分注意していきたい。

*1 中国西方の砂漠地帯から黄色い砂が巻き上げられ、それが偏西風にのって中国、韓国、日本などに降る現象。 *2 国立環境研究所ニュース12巻3号 *3 国立環境研究所ニュース22巻5号 *4 厚生労働省告示第19号

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